「マイクロマシン技術プロジェクト」は1991年度から10年間実施された。マイクロマシンの研究開発は、極限作業ロボットプロジェクトの後継として始まったが、プロジェクトが始った1990 年当時の国際的な環境の中ではわが国の科学技術に対して技術ただ乗り論で攻撃されている状況にあった。そのためプロジェクトの開発課題を選定するときには基礎技術重視の姿勢が強調された。更にこの頃、日米の間では半導体摩擦か最高潮に達している時期でもあった、このためにプロジェクトの課題の中に半導体という言葉は使えない状況でもあった。このような背景の下でプロジェクトの目的はマイクロメカトロニクスの基礎技術を確立することとし、この技術で実現される製品をマイクロマシンと定義し、日本独自のコンセプトを作り上げた。
一方、米国では半導体の微細加工プロセスを用いて作る微小電気機械的製品の作製技術をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:マイクロ電気・機械システム)と称して、その開発が進められていた。この技術・思想はわが国の半導体関連の製造現場に導入されて注目されるようになっていたが、プロジェクトの中では上述の経緯もあり、表向きこれを課題とすることはできなかった。そして10 年間のプロジェクトが進展する中で、プロジェクトの最終局面では最初のわだかまりも薄くなり、終了の時期ではマイクロマシン/MEMS技術として大きな21世紀の新製造技術に成長してきた。
このマイクロマシン技術プロジェクトで得られた成果は技術の高さ、社会的・科学的影響が非常に大きくこの分野の重要性を認識させ後継プロジェクトを発足させる起爆剤となった。 |
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